アラサー女のさみしい休日?

【恋愛遊戯 第18話】

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「このまま帰るのも何だから、何処かでコーヒーでも飲んでから帰ろうか?」
朝までホテルで過ごし、帰り道のことだった。私に気遣った一言だとすぐにわかる。

「でも、早く帰った方がいいと思う」
「……理恵子」
「あっ! 今日は友達と約束があったの忘れてた! 早く帰らなくちゃ」
「そうなの?」
「う、うん、ごめんなさい。それじゃ、ここで失礼します」
「またメールするね」
「ハイ、ありがとうございました!」
私は慌てて高村さんから離れ、振り返ることなく走った。

きっと、こんなことをする私なんて、全然可愛くない。約束なんて無いくせに、嘘なんかついて素直じゃない。
私が5歳……いや、10歳若かったら「もっと一緒にいたい」と言えたかもしれない。

男ゴコロなんて、全くと言ってもいいくらいわからないのに、何となくわかってしまった。
彼は無理をしていると。早く帰らなくてはいけないと……。

心が、引きちぎられるように痛かった。

自宅に戻って携帯を見たら、高村さんからメールが入っていた。
こんなメール、好きじゃない。
リアルタイムで何を言ったって、どれだけ甘い言葉を並べたてられたって。肝心なぬくもりも声も、ここには無いーー。

「何もしたくない……」

2年前に、3歳年上の彼氏と別れてから、休日にすることといえば1人でショッピングやカフェ巡り、そして1人暮らしのアパートの掃除と大体決まっていた。休日に誰かと会うことは滅多になく、1人で好きなことをするのも悪くなかった。

ーーでも、今日は違う。
四六時中、金曜日の夜のことで頭の中を占めてしまい、高村さんに触れられた感触を思い出しては身体が疼くのだ。

(……今日は、何もやらない!)

たまには、何もしないでぼんやりしよう。
そう決めこんで、マグカップにインスタントコーヒーを入れ、買い置きしておいたクッキーをテーブルに出し、数日前に近所のコンビニで買った雑誌をパラパラめくってみる。
しかし、どうしちゃったんだろう? コーヒーもクッキーも、アジがしないし、雑誌の内容は、全くといっていいくらい頭には入らない。

私の頭を過るのは、彼が今頃きっと、奥さんとーーということばかりだった。

ムナシイ……
セツナイ……
しかし、好きになってはいけない人を好きになって、こんな感情が芽生えること自体、罪なのだろう。

どうしたら、この感情を消すことができるの?
一体、どうしたら?

考えごとをしていたら、いつの間にかうたた寝してしまい、18時まで目がさめなかった。……これが、彼氏のいないアラサー女の現実……表向きは、自由気ままに好きなことをしているように見せていたって、本当は1人暮らしのアパートで淋しく過ごすのだ。

友達は子育てに追われて、構ってもらえず。
実家に帰ると「孫の顔が見たい」と言われ。
その孫の顔を見せようったって、妻子のいる男にハマっていては、子供も作れない。

結婚をして、子育てに追われて「大変だ」なんてボヤいてみたい。
いつか私に、そんな日が来るのだろうか?

結婚にはほど遠い、彼との関係。
「彼が独身だったらいいのに……」と、思わずにはいられなかった。