美容整形大国・韓国に学ぶ恋愛事情

【佐伯紅緒のスーパーカミオカンデ】 第101回

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韓国へ行ってきました。
今、あの国の若者たちの間ではカラダを鍛えることが流行っていて、今回、佐伯が真っ先に覚えたのは「モンチャン(細マッチョ)」という言葉だった。

もちろん鍛えているのはカラダだけではなく、韓国、男性化粧品の消費量が現在ダントツで世界一。
テレビをつけても男優が出演してる化粧品のコマーシャルばかりである。

美容整形が歯のホワイトニングと同じくらいに考えられていて、東京でいえば青山通りにあたる一等地に「美容外科大通り」というのがある。いやほんとに大げさじゃなく、伊勢の「おかげ横丁」みたいに美容外科が軒をつらねているのである。

そして施術を受ける側もてらいがなく、きっとモニター契約の代償なんだろう、大通りに面した看板に、そのクリニックで施術を受けた人たちのビフォーアフターがババーンと広告してある。隠さないのか、そうなのか。すごいなー、としみじみ思う。

もちろん、クリニックの値段なりの甲乙はあるんだけど(低価格ほどやっぱり『やった感』が強く出ちまっている)、そんな感じだからこの国、道行く人たちが男も女も(特に若者)、訪問するたびに妙にみなさん、薄ギレイになっていってる。

今回、最後の晩にいまソウルでいちばん美男美女が集まっているという街に行ってきたんだけど、すれ違う人すれ違う人、みんな一体どうしちゃったのっていうくらいキレイだった。
なんでこんなに美容医療が発達してるんだろうこの国は、と考え、いろいろ聞いてみるうちに、佐伯はあるひとつの事実に行き当たった。

つまりこの国、儒教よりなにより「美しいことは善である」という、アラビアンナイトばりの一神教がまかり通っているのである。

その努力がもっとも反映されてるのが、今のソウルのクラブ事情。
どのクラブも、どれだけキレイな女の子を集められるかにかかっていて、それを業界では隠語で「水質管理」と呼んでいるそうだ。つまり、どっかのクラブの話が出ると「そこ、水(女の子のクオリティ)はいいの?」というかんじ。

まるでバブル期の東京である。どのクラブも必死だから、女の子の誘致には余念がない。キレイな女の子はどこへ行っても入場料も酒もタダだし、VIPが来たらすぐに呼ばれて臨時宴会要員になる。女の子のほうもセレブとお近づきになれるチャンスだから、たいていは嫌がらない。

でも、そういうキレイな女の子たちは基本、セレブとの出会いではなく若いイケメン相手の恋愛が目的でやってくるので、ソウルの人気クラブには恐ろしいことに「男性の年齢制限」がある。つまり、「オヤジが来るとキレイな女の子が逃げるからお断り」というわけだ。だから一部の金持ちや業界人を除き、男性陣は年齢確認のための身分証明提示が義務づけられてる。そして40upの男性陣はここからは締め出されてしまうのだ。
(ちなみにこれ、女性の方は提示義務がないらしい。どーしてだろー?)

だから、みんなこぞって少しでも若く、美しくなるべく整形する。もちろん、しない人もいるんだけど、街でカフェなんかに入ってみると、していない人、まずいない。いっぺん、明洞(ミョンドン)のカフェでトイレに行ったら、並んで待ってる女の子たち、一人残らず一生懸命フェイスラインや腰のくびれをチェックしてた。きっときっと、24時間自分の「美的偏差値」について考えているんだろう。

しかしこれだけみんな薄ギレイになると、もはや見た目よりも中身のほうが勝負になってくるんじゃあるまいか。そんな風に思ったのは、街中にあふれている「インスタント美形」を見て、その中にもなんだか目に見えないヒエラルキーがあるように感じたから。

つまり、いくら外見を整えても、「美形のオーラ」を持ってない人がとっても多かったのである。つまり、つい昨日までは「美形」というアイデンティティを持っていなかった人たち。よく見るとすっごい整った顔をしているんだけれど、それに見合ったオーラが出てないというか、ぴかっと光るものがない。要するに、電源が入ってないシャンデリアみたいな風なのである。

だから、すごい皮肉な話なんだけど、この国、美容医療によって「見た目の美醜」に個人差がなくなったことによって初めて、かえって内面のキレイ度(イケメン度)が問われる時代になったんじゃあるまいか。

もはやここまでいくと美容医療は数あるツールのひとつに過ぎず、あとはそれをどう生かすかという「IQ的問題」が重要になってくる。つまり、どこのクリニックでどの施術を受け、どういうカスタマイズを行うか。その次元になると「頭の良さ」でものすごい開きが出てくる。やりすぎてクリーチャーになる人もいれば、ほどよくやって人生を謳歌してる人もいる……と、ここまで書いていて、佐伯は突然ハタと気づいてしまった。

日本ってきっと、もうとっくにその段階に入ってるんだろうね?