アラサー女は“おひとりさま”が好き?!

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【恋愛遊戯 第14話】

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木曜日の仕事は、いつも中だるみをしてしまう。ヤル気がないわけじゃないけれど、忙しい日に比べて、ゆっくりと仕事をすすめてしまうのだ……それに今日は昨夜のこともあり、余計に集中できなかった。

「今日は、理恵子ちゃんの好きな苦味の強いコーヒーだよ」
「ありがとう、よっしー」

30を過ぎると、周りの友達は結婚し、子育てに追われるようになる。話題の中心が「家族」になってしまうママと、「仕事」のことばかり話す独身女。お互いに誘いにくくなり、疎遠になっていく。そして、次第に『おひとりさま』で行く店が増えていくのだ。

ここのカフェ『ぱいおらん』も、おひとりさまで通う店の一つ。
その日、その日でオススメのコーヒー豆を使い、淹れてくれるコーヒーと、看板メニューのエクレアが絶品で、私は週に2回はコーヒーを飲みに来ていた。

行きつけにしてからは、2年くらいになるだろうか。
ぱいおらんのオーナー、よっしーとは友達のように話すような間柄だった。
店の窓際、奥から2番目の2人掛けの席。座るところはいつも決まっていた。そこがなんとなく“しっくり”くる。

腰を下ろして10分ほど経つと、よっしーが私の席まで運んでくれる。これも毎回同じタイミングで、程よいマンネリが心地よいのだ。
「はい理恵子ちゃん、エクレア」
「えっ? よっしー? 今日はコーヒーだけだよ?」
「今日は、エクレアが売れ残ってしまってね……理恵子ちゃん、よかったら食べて」
「ありがとう、いただきます」

エクレアを食べながら、ふとショーケースを見たら、エクレアは一つもなかった。どうして「売れ残った」だなんて言ったのだろう?
よっしーを見たが、特に表情を変えることもなく、仕事をしていた。

「今日は、本を読まないんだね」
「えっ? うん、本を家に忘れてきちゃったの……」
「何か考えごとでもしてるみたいに見えるけど?」
「ううんっ、今日はちょっと疲れちゃったー! やっぱり疲れてるときは甘いものがいいね。よっしー、ありがとう」

普段、ぱいおらんではコーヒーを飲みながら本を読むかよっしーと話をするかのどちらかなのに、今日は何もしていなかった。悩んでいるのがわかってしまったのだろう。人気メニューなのに悪いことをしたな、と思った。

「さて、そろそろ帰ろうかな」
「理恵子ちゃん?」
「ん?」
「……気をつけてね」
「あの……」
「何? どうしたの?」
「今日は、気を遣わせちゃってごめんなさい。それと、ありがとうございました」
「ん? 今日はエクレアが売れなくてね。理恵子ちゃん、ありがとう」
「それじゃ、またね」

ウソには2種類あって、相手を思いやって言うモノと、自分の保身のために言うモノがある。
エクレアが売れ残りではないことに私が気づいたことを彼は察した。それでも敢えて「売れなかった」と言ってくれた。

私を思いやってくれたことを理解しながらも、もしかしたら「痛い女」に見えているのではないかと勘ぐってしまう。

もっと真っ直ぐに受け止められたら、色んなことが楽しくなるはずなのに。
身体だけでなく、心も“中だるみ”した木曜日になってしまったーー。

あぁ疲れた、と声に出してつぶやいていた。これもアラサー女特有のひとり言かもしれない、と思いながら帰っていった。

著:よしい美玲
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