身体に刻みこまれた強烈な感触と温もり。

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高村さんとのキスの感触、腕の温もり。そして囁かれた言葉は、最初にキスをした日より強烈に私の身体に刻みこまれていた。
それでも、昨夜の余韻が抜けないまま、会社へ向かわなくてはならない。私の身体はおもりでもついているかと思うほど重かった。

シャツワンピースを纏い、7cmのハイヒールをはいて、キッチリとメイクをして颯爽と歩いているつもりでも、頭の中は男のことで占めているなんて、自分はバカみたいだと思えてくる。
でも、それはもしかしたら本気で好きだからこそ湧いてくる感情なのかもしれない。


「もしもし?」
会社まであと50mのところで携帯を鳴らしたのは、高村さんだった。朝早くから、何か用事だろうか? 彼も仕事の時間のはずなのに……。

「おはよう、理恵子」
「ど、どうしたんです? こんな時間に電話なんて?!」
「理恵子の声が聞きたくなってね、ちょっとだけいいかな?」
「あっ、ハ……ハイっ! 大……丈夫です。」
ダメだ、上手く喋ることが出来ないや。何故か吃ってしまう。

「昨日は、ありがとう」
「こちらこそ、ありがとうございました」
「昨日の理恵子の表情は、セクシーだったよ」
「なっ……! あ、朝から何言ってるんですか」
「理恵子の可愛い唇を見ると、キスしたくなってね? 昨日はキスばかりしてしまったね」
「私、恥ずかしいです」

昨日の話をするだけで、身体の奥が疼き、熱くなってしまう。「恥ずかしい」と口にしているのに、キスをして抱きしめてほしいと思っている。これが電話で良かった。面と向かって会話をしていたら、自分から求めてしまいそうだ。

「来週の金曜日、また仕事が終わってから会えないかな?」
「えっ? どうしよう……」
会いたくてたまらないはずなのに、少し躊躇してしまうのは、ホテルに誘われるんじゃないかという不安からなのか。「抱かれたい」と思いはじめているからか?

「個室だと、理恵子にキスしたくなってしまうから、今度は個室じゃないところにしようか?」
「あ……、ハイ」
「どうした? オレとキスしたくてたまらないのか?」
「ちょっと、高村さん! 朝から恥ずかしいですよ」
「そっかそっか、理恵子はキスしたくてたまらないんだね? わかったよ、キスしてあげるから」
「高村さん!」
「ハッハッハッ……やっぱり理恵子は可愛いな。それで、都合はどうかな?」
「大丈夫です」
「それじゃ、来週金曜日の18時にね? 理恵子、もう会社に行かなくちゃダメだろう?」
「あっ? ハイ」
「そろそろ切るよ、ありがとう」
「ありがとうございました」

昨夜の帰りもあっさりと別れたけれど、電話を切るときもあっさりしている。
高村さんは、本当に私の声を聞きたくて電話をしてくれたのか? それとも、ただ私をからかいたくなっただけ? それとも、もっと別に理由があるのか……?

高村さんの考えていることは、全くわからなかった。純粋に言われた言葉を受け入れていいものかどうかもわからない。
それに自ら「女好き」だと言っているような人を、どうして好きになってしまったのだろう?

否定をしようとすれば、より強く好きになってしまう。引き返すなら、今のうちかもしれないと思えば思うほど、余計に離れられない。

たぶん、私は狂っているのだ。

著:よしい美玲
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