その言葉は本気? それとも遊び?

【恋愛遊戯 第7話】
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高村さんは、一体何を考えているのだろう?

こういうときは「妻への愛なんてすっかり冷めているんだ」なんて口説くものじゃないの?
それにキャバクラでは、アイちゃんという、若くて可愛い女の子が大切なお客様として接しているはず。
家庭も、家庭以外でも、女性関係では不満なんて皆無に等しい男が、結婚に行きそびれたアラサーの私を口説きたくなるなんて……。

やっぱり、冗談に違いない。どう考えたって、私を口説きたくなる理由なんて思い浮かばない。真に受けてないで、イベントのお仕事に集中しなくちゃ!

昨夜から、ずっと高村さんのことばかり考えていた。
からかわれているーー頭では理解をしたつもりでも、彼のことでモヤモヤしてしまう。高村さんのように、すぐに女を口説く人なんて、私が好きになるタイプではない。それなのに、頭の中は彼のことで支配をされてしまった。

(絶対、好きになんてならないから)
何かを否定するかのように、心の中でつぶやいていた。

「北原さん」

「……っ!! 高村さん! おはようございます」

「また驚かせちゃったかな?」

「いえ、大丈夫です。よろしくお願いします」

貴方のことを考えていたから、驚いただなんて分かったら、またからかわれるに違いない。わざと私をドキドキさせて笑うのだろう。高村さんは、意地悪な人だから。

今日のために、服を新調した。
メイクも髪型も全て念入りにチェックをしてから家を出た。
それだけ気合を入れても、高村さんの会社の方に比べたら、自分だけが見劣りするような気がした。自分以外の人は皆、立ち居振る舞いだけで知的に見える。私は場違いなところに来てしまったと思い、引け目を感じていた。

「北原さん」

「ハイ?」

「ちょっといいかな」

高村さんに呼ばれ、私は恐る恐る控え室に向かった。
あんなに厳しい表情の高村さんは初めて見たけれど、何かマズイことをしたのだろうかと不安になってしまう。

「さて……」

「ハイ」

「時間まであと30分あるし、2人きりだから理恵子を口説きたいんだけどいいかな?」

「はっ?!」

「クックックッ……冗談だよ。理恵子が今にも泣きそうな顔をしているから、からかいたくなってね」

「私、そんな顔をしてました?」

「もしかして、自分が周りに比べて見劣りしているなんて思ってる?」

「なんでわかるんですか!」

「なんとなく、そう見えてしまってね。でも、オレは理恵子が見劣りしてるなんて全然思わないよ」

「本当?」

「でも自信なさそうにしている理恵子より、笑顔の理恵子のほうが魅力的だな」

「すみません、気にかけて下さってありがとうございます」

「大丈夫だから、胸張ってやってみて。理恵子なら出来るから」

「ありがとうございます! がんばります」

「いい顔だね、すごく可愛いよ」

「あ……」

「ゴメン、ゴメン。また口説いちゃったね」

「ふふ、大丈夫です」

高村さんが緊張をほぐしてくれたおかげで、堂々と仕事ができた。
彼のような人が1人いたら、仕事は本当にやりがいのあるものになるのだろう。

イベントは皆が一丸となり、スムーズに進行ができたし、さりげなくフォローも入り、失敗をすることなくできた。
高村さんの部下からの信頼度は、全員の仕事ぶりを見れば容易に想像が出来る。彼の仕事ぶりがカッコ良く見えるのは、こんな部分からもうかがえるのだろう。

気づかないうちに、彼を自分の視界に何度も入れていた。

著:よしい美玲
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