失敗は成功のもと!?恋愛サバイバーのすすめ

【佐伯紅緒のスーパーカミオカンデ】第78回

毎週毎週こんなコラムを書いていてなんだけど、佐伯は決して「恋愛のエキスパート」なんかじゃありません。
こんなの、皆さんとうの昔にわかってくれてると思ってたんだけど、最近そういう誤解をされていることが多いと気づいたので、ここらで一発ハッキリとその誤解をといておきます。

私は恋愛の「達人」ではなく、単なる「サバイバー」に過ぎません。
そう、いわば「生き残り」。
「サバイバー」とはなにかというと、過去の恋愛でどんな事故物件にひっかかっても致命的な傷を負わず、むしろそれをカテやバネにし、自分をステップアップさせてる人のことです。
つまり、戦場でなにをすれば生き残れるかを知っている人のように、恋愛戦線において致命傷を負わないためのあれこれを知っている人のことです。

自分でこうやって書いていて涙が出そうになるんだけど、私はもともと「事故物件」好きな女。だから、作家として本を出すまでに随分いろんな苦労をしました。
一晩中無言電話をかけ続けてくる人と付き合ったこともあるし(まだ携帯電話がない頃の話)、朝の4時に叩き起こされてエアコンのフィルターを洗わされたこともある。薬の飲みすぎで現実と妄想の境目がわからなくなっちゃった人と暮らしていた時期もあります。

なんでそんな男と付き合ってたの?  と聞かれれば好きになっちゃったからですとしか言いようがないんだけど、その頃の自分にはやっぱりそういう人が合ってたんだと思います。
だから、いまこうやって書いていても、思い出すたびに「うわー」「うわー」って布団ひっかぶりたくなるような記憶はいっぱいあるし、あの頃の自分をグーで殴りたい、と思うことはしょっちゅうです。

そう、私はたぶん、これを「あの頃の自分」に向けて書いてるんだと思う。
だからこれは「私のようになりたかったらこれをおし」という上から目線のものじゃなく、「私みたいな目に遭いたくなければそっちには行かないほうがいいよ」という、戦争体験者の書いた「戦場で生き残るコツ」みたいなものだと思ってください。

ほら、そこ、地雷あるよ。私まえ踏んだことあるから知ってる、とか、
その草、ちょっと見はおいしそうだけど食べたら確実に下痢するよ、とか。

痛い目に遭ったことがある者にしかわからないことっていっぱいある。ちなみにいまこれ
を書いているのはスターバックスなんだけど、いまこの瞬間も隣の席ではマルチの勧誘が行われている。
「お嬢さん、それマルチですよ、だからいまあなたが悪しざまに言われてる『あんたはコミュニケーション能力がない』なんていう言葉は信用しちゃいけません」って席を立って耳打ちできたらどんなにいいだろうっていつも思う。
(あまりに悪質だと思った時にいっぺんやったことあるけどね)

でもたぶん、いま泣きそうになって勧誘員の話を聞いてる彼女には「騙される経験」というのが必要なような気もする。だから、かつてなんでもかんでも信じちゃってた私みたいに、いっぺん思いきり騙されて早く帰っておいで、とか親のような心で念じてるわけです。

でもね、「智者は知識によって知り、愚者は経験によって知る」。
愚者だった私としては、みなさんにはなるべくなら智者でいてほしいと思うわけです。
だって、ちょっとした知識があるだけで回避できる危険っていっぱいあるんだもの。

まえに読んだことがあるんだけど、なんだかんだいって戦場で生き残ったのって、グウタラだったり臆病者だったり、ようはあんまり勇敢とは言い難い人達が多かったんだって。
臆病だから真っ先に突撃して弾に当たることもなく、捕虜になってもサボリサボりやってたから生還できたらしい。
恋愛もそれと同じだと思うのです。なにも特攻して玉砕するより、いま好きな人に彼女がいるならまあしばらく兵舎に戻って様子みるか、その間私も別に恋愛してぇ、みたいないい加減さが大事なんじゃないかしらと。

彼が浮気した時とかも、踏み込んで修羅場になるとか(したことある)相手をバッサリ切るとか(したことある)よりも、大目にみるなりペナルティを課すなりして、いくらでも関係を保つ方法ってあると思う。
浮気はDNAの叫びだから基本的には加齢を待つより仕方ないんだけど、実際の話、できる男って浮気する人すごい多い。だからよほど病的なものでない限り、佐伯は関係が安定してる上での火遊びならあんまり目くじら立てる必要はないような気がする。

あ、でも必要な時になったら目くじらは立てなきゃいけませんよ。そうしないと男の人は例外なく図に乗るから。見て見ぬふりとシメることは両方できたほうがいい。
そして男は浮気を隠すのが本当に下手だから、バレるぐらいならしないでくださいよ、と正直佐伯は思う。

あとはさ、あんまり苦しかったら極端なやり方だけど「いちど相手と同じ立場に『実際に』立ってみる」っていう荒技もある。
前に病的な浮気者のダンナさんのいる奥さんが、あんまり悔しかったからいっぺん自分も浮気したって話を聞いたことがある。だけどこれがまあ、思っていたより全然大したことなかったんだって。「たかがこんなことのためにあの人はあんなに労力を費やしてたのか」って思って、少なくとも、離婚するほどのことじゃないってのは文字通り身体でわかったらしい。あれしきのことで離婚するなんてもったいないよー、ってその奥さん言ってたっけ。

佐伯はそこまでの境地には達したことがないからわからないけど、なんにせよ、好きだからといって妙な我慢はしないほうがいい。我慢は許しや寛容とは違う。許しは寛容は健康にいいけど、我慢は絶対病気になるから。
心が健康である限り、しなくてもいい苦労ってのは確実に存在します。だから、恋愛市場においては少し臆病なくらいがいい。でも、だからといって危険を避けてばかりでは冒険がなくて面白くない。よって「サバイバー」の極意は「臆病」かつ「好奇心旺盛」であること。この二刀流でいかがかしら?