うそつき男にご用心!騙されないために必要なのは?

【佐伯紅緒のスーパーカミオカンデ】 第70回

善良なこのコラムの皆さんには想像もつかないと思うんだけど、世の中には平気なカオして嘘をつく男ってのがいる。結婚してるのにヌケヌケと独身だと言い張ったり、契約社員なのに自分はヒルズ族の社長だと嘘をついたり。 それが「男のミエ」の範囲内なら笑って許しもするけれど、うっかりコロッと騙されると人生棒にふりかねない。

でもこれ、嘘つき男が悪いのはもちろんだけど、女の側にも問題がある。
つまり、男の嘘を「見抜けない」。これはゆゆしき事態である。

こないだ、担当編集者のHさんから聞いた首の骨が折れそうな話。

Hさんの知り合いの女性が最近ツイッターで自称・IT企業社長と知り合い、その彼が、彼女のために都内のホテルのスウィートルームを予約してくれたという。しかしよく聞くとそのホテル、なんとビジネスホテルだったというのだ。

「スウィートなんかじゃなく、普通の部屋で全然かまわないんだから、そこはやっぱりリッツ・カールトンとかにしたほうがよかったと思うんですよね・・・」
こう言ったのはもちろん当の彼女ではなく、その話を聞かされた編集者Hさん。平常心を保っていれば、たとえHさんでなくても「彼女と泊まるのにビジネスホテルのスウィートをとる」という行動のおかしさに気づくはずなんだけど、悲しいかな恋は盲目、この恋愛をうまくいかせたいためにあえてスルーしてしまうのだ。

ていうか真っ先に突っ込まねばならないのは、ツイッターは出会いの場としては非常に不適切な場だという点。なぜなら、TwitterはmixiやFacebookなんかと違い、その気になれば嘘のつき放題。アイコンだって適当に見栄えのいいのを貼っとけばいいし、経歴なんかいくらでもフカセる。身元確認事項の記入もいらないし、都合が悪くなればアカウントなんかいつだって消せるのである。

そんなところで生涯の伴侶を探そうなんて、もうこれはどう考えても生存本能がこわれてるとしか思えない。案の常、その彼は絵に描いたような不良物件で、その恋愛はみごとに玉砕、彼女は今、次の恋愛に向けて自分磨きをしているという。

まだまだあるよ、フカす男の話。次は知り合いの郁ちゃん(仮名・25歳・宝石店勤務)からつい先日聞いた話。
郁ちゃんが働いている銀座にある宝石店に、しばらく彼女めあてにひんぱんに通ってくる挙動不審な男がいた。作務衣を着た坊主頭の男で、年の頃は40前くらい、痩せていて顔はそこそこイケメン、ただ作務衣の袖から覗く腕時計は常に金のロレックス、足にはぞうりでも下駄でもなくグッチの靴をはいていた。

男が差し出した名刺には京都のある大きなお寺の名前が書かれていた。男は自分はそこの跡取り息子と名乗り、今はまだ自由にさせてもらってるけどいずれは跡を継がなきゃならないという。男は最初に10万円くらいの指輪をひとつ郁ちゃんから買い、その後はべつに何を買うでもなく、ただ郁ちゃんに会うためだけに店に通ってくるようになった。
なまじ購入歴のあるお客さんなのでそうムゲにもすることができず、先輩に相談しても「まあ適当にまた何か買わせなさい」の一点ばり。店員数の少ない店なのでかなりの確率で彼を接客するハメになり、郁ちゃんにそのうち彼から食事に行こうだの歌舞伎座のチケットが二枚あるだのとあからさまに誘われるようになった。

そんなある日、とうとう郁ちゃんに逆襲のチャンスが訪れた。

その日、男は「キミにいいものを見せてあげる」と、大きな紙袋から三冊の大きなアルバムを取り出した。郁ちゃんがそれを開くと、そこには彼といろんな芸能人が並んで写った写真がビッシリ貼られていた。ウンザリしながら一枚一枚ページをめくっていた郁ちゃんだったが、そのうちにある箇所で手が止まり、顔を上げて男に訊ねた。

「あのう、この人もお友達ですか?」

郁ちゃんが指さしたのは、今人気急上昇中の若手俳優Aだった。男は一瞬目を泳がせ、そうそう、仲いい飲み仲間だよ、と言った。

郁ちゃんは息を吸って男に言った。「それ私の兄です」

実話である。

こういう話を聞くにつけ、うそつき男を撃退するいちばんの方法は「情報強者である」ことなんだなと思う。知らないから騙される。でも、必要な情報があればかなりの危険は避けられる。この郁ちゃんみたいに劇的かつ特殊きわまるケースではなくても、今は相手の真贋を見極めるためのいろんな手段がそろっている。ネットであれソーシャルであれ、確かめる方法はいくらでもある。あるんだけど、「夢を見させていてほしい」とつい願ってしまうあまり、あえて男の嘘に目をつぶってしまう女性がいるのも悲しいかな現実・・・。