『プロ彼女』なる生物と遭遇したときの心得

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よく、映画とか作る稼業の人たちとの打ち合わせや飲み会に行くと、「この人なんでここにいるの?」というような若い女性が座ってることがある。

 

なにか夢に向かって頑張ってるというワケでもなさそうだし、かといってその場にいる誰かのファンというワケでもなさそう。そんな彼女たちの特徴は、若くてきれいで口数少なく、そして周りに妙な気を遣わせ、自分は場を和ませるためのフォローを一切しないことです。

大抵、元モデルとかの経歴を持ち、身なりは常に完璧で、自分は一般人でありながらもつるむ相手はセレブばかり、といった女の子たち。

彼女たちの正体はおそらく、昨今、世間を賑わせている「プロ彼女」

(=芸能人を射止める一般人女性)、あるいはその周辺にいる人たちと思われます。

まあぶっちゃけ、

「自分は何者にもなれなかったから、代わりに何者かの彼女なり奥さんなりになって自己重要感を高めようとしてる」

んだろうけど、佐伯は仕事はできるけど女にはだらしない仕事仲間に「おーい飲みに行こーぜー」と誘われた先でこのテの女性がヌッと座っているのを見ると、心中ひそかに「サーテ」と心のフンドシを締め直します。

なぜなら、このテの女の子にさんざん気を遣い、過去イヤーな思いをしたことが何度もあるから。

なんだろなー、あの、独特の感じ。

そういう場所に若い女の子が混ざっているパターンはいくつかあるんだけど、

それはまず、

・自分も何者かになりたくて、先輩たちからひとつでも多くのものを吸収しようと頑張ってる

パターン。

そういう子は見ればすぐわかる。なぜなら、「自分はこの場に呼んでもらってはいるけどまだまだ修行中」だと思っているので、料理とりわけたり質問をしたりして「場」に貢献してくれるから。

もちろん、そういう子たちは自分が若かったりきれいだったりすることは充分承知している。でも同時に、そんなものはしょせん年月が経てば失われる「キエモノ」だとも知っている。

数年たてば自分がいま座っているこの席には他の誰か若い子がいる、だからそうなる前に、ひとつでも多く自分に付加価値をつけておきたい。

そういう子はどんなにニコニコしていても目を見ればすぐにわかる。今の自分の力量を知っているのでいくら男にチヤホヤされてもドヤ顔しないし、かつその目の奥には必ず「今にみておれ」という野心がチカチカしてる。

そういう子はガンガン応援しちゃう。だって、かつての自分がそうだったし。

作家になりたくて頑張っていた頃、すでに世に出た人から「ただヤリたいだけの消耗品」扱いされることほど屈辱的なことはなかった。だから、早くそういう目で見られないよう、いっぱしの仕事人になりたいと願っていた。

だけど悲しいかな、「女」としてでなく、「作業要員」としてそういう場に呼ばれるようになった頃には、「悪い虫」のほうがエンリョして寄りつかなくなってくださる。

だから、もうひとつのパターン、

・自分はなんの努力もせず、ただただ有名人と近づきになることをステイタスとしてその場にいる

タイプの子に遭遇すると、すいませんもう勝手にやってくださいとしか言いようがないのです。

「私は若くてキレイだから」という理由にどっかとアグラをかき、ヘタをすると20も上の私に料理をとりわけさせて「あ、どうも」とかいってヘーゼンとしてる子を目にすると、人生の先輩としてはついなにか言いたくなってしまうんだけど、そこはグッと丹田に力を込め、あえて無言を貫き通す。

だって、そんなところでなにか言おうものなら、

「若い子に嫉妬するこじらせ女子」

の烙印を押されるのは火を見るより明らかだし、そこで学ばず年をとるのもその人の自己責任だからです。

だから、このテの「プロ彼女ワナビーズ」に遭遇したときの対処法はたったひとつ。

「あたたかく見守る」

これに尽きます。

うかつに近づいて気を遣えばドアマット代わりにされるのがオチ、かといって変にからめば周りの男衆になんのかんのとからかわれる。

だから、もし仕事場や酒場でこの手の女子に遭遇したら、その対処法はたったひとつ、余計な気を一切遣わず、ただただあたたかく見守るに限ります。

そうでなくてもこのロリコン大国日本、女は年をとればとるほど商品価値がダダ下がりと見なされる。

でも、実際はそんなことはなく、努力次第で千差万別の個人差がある。

逆に言うと、このテの若い子を目にした時、自分がどういう反応をするかってのが、実は自分の女としての成熟度のリトマス試験紙だったりする。

つまり、それまでにちゃんとした人生を積んできたなら問題はないってこと。

肌のハリやみずみずしさは、到底若い子にはかなわない。

だけど、その代わりに身につけてきたものならたくさんある。

それがあるなら大丈夫。ぜんぜんこわがることありません。

大事なのは「張りあわない」こと、そして「同じ土俵に立たない」こと。

まあ、向こうがケンカを仕掛けてきたら、それなりの報復はしますがね。


佐伯紅緒

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日本の小説家。東京都葛飾区出身。 2006年、世界文化社より描き下ろし長編小説『エンドレス・ワールド』でデビュー。夫は脚本家の尾崎将也。


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